PROCESS
【ラフスケッチから原画完成まで】
湊かなえさんの『豆の上で眠る』第4回の扉絵
週刊新潮連載時の挿絵は、全て彫り進み版画で制作しました。
夏休みに子どもたちが神社で遊んでいるうち、誰かが「神隠し」の話をし始めて、なんとなく薄気味悪さが漂うような場面です。

ラフ①
子どもたちが際立つように、階段の上の背景を抜いてみました。

ラフ②
神社らしく鳥居を配置してみました。
1週間くらいで仕上げる必要があり、時間を節約するためにどっちもどっちなラフなので自分で②を選んで手直し。
・②を選んだ理由は、もう少し子ども達に寄った方が「ヒソヒソ話が聞こえてくる感じがして」いいのではないかな、と思ったから。
・直したところは、タイトルと子ども達が近すぎて見苦しいので離しました。

提出してOKが出たので、反転して出力したものを板に転写して版画の技法を使って描き進めます。

原画は3日くらい、賞味30時間ほどで完成します。


『ロータリーの友』9月号(ロータリーの友事務所)表紙
毎号、ロータリー理事会で決められたテーマに沿った内容の表紙で、9月のテーマは「識字率の向上」でした。「識字」を意識して考え、ラフ案を次の2つに絞りました。

ラフ①:文字を知る
文字を読めない事で、不利な条件を飲まされたり、無茶な契約をして不幸になる人がたくさんいることを改めて認識しました。なので、世界じゅうには、子どもだけでなく大人達も、文字を知りたい学びたいと思っている人がたくさんいて、そのような環境が国境も年齢も越えて整えられたら素晴らしいだろうな、という考えを表してみました。

ラフ②:文字を知ることでより広い世界を知る
文字を知ることで、色々な書物を読むことができ知識を得ることができる。知識を得ることが楽しく、より向上心も芽生え、好奇心も湧き、突き詰めると、そういうことが基礎になって科学の発展につながるのだなあ、と思いました。
文字を読めることを喜び、感謝して、たくさんのことを楽しく学ぼうとしている子や人を描いてみました。
②案が、採用されました。
初めに描いた文房具のアイテムを使って、表紙自体に「ROTARY」の文字を作るアイデアが浮かび、その方向でラフを詰めていくことにしました。

ROTARYの文字は気づきやすいけど、人物が少し弱いかな…
最後の「y」は、どっちにしようかな、と2つ描いてます。

なんとなく収まりが良いような気がします。でも、6つの文字が、上下に2つと4つでブツっと分かれているのが気になる。

土星に乗っているよりは、観察対象にした方が”天体を学ぶ”様子が伝わっていい、と思いました。人物を大きくし、文字を全体に配置したい気がするため、どうしようかと、悩みます…。
最終ラフは、次のようになりました。

人物が中心になり、文房具が目を引き、土星は小さくても赤くすることで良いアクセントになるのではないか、と思いました。こちらを最終確認に出して、OKが出たので、文字や色、人種など注意事項を守りながら、本描きに入ります。
学習ノートを切り取って着色し、それを背景にすることにしました。
合成ではなく、直接描き込んでいます。
文字が読めればこそ、この表紙の意味が伝わるという面白さを表現してみました。伝わるといいのですが…

右下のノートに何やら書いている女の子は、昔、学生の頃に行ったインドで出会った少女で、ずっと記憶に残っている子です。泊まったホテルの子で、当時小学生だった彼女は、ハッキリと「医者になりたい」と言って勉強していました。自分と違って向上心のある彼女が、それはそれは、眩しく見えたのです。(きっと、医者になっていると思います。)

『ロータリーの友』8月号(ロータリーの友事務所)表紙
8月のテーマは「会員を増やす」で、コンペ案件でもありました。このコンペを通過すると、1年を通じて表紙イラストを描かせていただけることになります。
ロータリークラブでは、ロータリーの魅力や活動内容を伝えるための「多くの人との交流」シーンを作っています。なので、色々な活動の場面を描くことを中心にラフを考えました。
また、できるだけ様々な人種、人物をたくさん描いて欲しいというご要望もありました。

ラフ①:グリーンカーテンのお手入れで地域の方々と交流している場面。
建物の3階あたりの窓から外を見ている感じです。植えて終わりでなく、その後の手入れをしっかりしないと良いグリーンカーテンにはならないので、みんなで頑張っている様子。

ラフ②:夏まつりの場面。
地域のお祭りでは、プロの屋台もありますが、大学や小中学校、高校の部活、子ども会、老人会、地元の飲食店や工務店…、色々な人の集まりが思い思いの店を出して、工夫して、食べ物飲み物だけでなくアトラクションやワークショップを開いたりして、お互いに交流を深めています。こういうところにロータリークラブの人たちも、もちろん参加して地域貢献・地域交流を深めている、という様子です。

ラフ③:みんなで夏野菜を収穫する場面。
種植えから、雑草採り、水やり…精を出して育てた、たくさんの野菜を収穫する喜びを地域の人たち共有している、という様子です。

ラフ④:「人が種である」というメッセージ
ロータリー財団では、学生の留学支援も積極的におこなっていて、人への投資を惜しまない姿勢は本当に素晴らしいものだと感心しました。結局、そのような機会を与えられた人が成長し、次の世代を助けることで恩返しをしよう、と努力するのではないかと思うのです。なので、ロータリー財団がたくさんの種をもつヒマワリのようだと思いました。ひまわりの黄色とロータリ―マークの黄色をリンクさせて、ヒマワリの種の部分を全部人の顔にしたら、面白いのではないかな、と思いました。
②案が採用されました。
もう少し描き込んで再提出。OKが出たので着色に進みます。


赤ちゃん連れの家族や子ども達だけのグループなども描く必要があったので、夜の遅い時間帯というよりは、日が暮れかかった頃の雰囲気を目指します。
なので、なるべく提灯や屋台の灯りで明るい雰囲気を出すことにしました。
日が暮れかかった時間帯の色を見るため、写真を参考に進めます。







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